依頼の背景と父親の直感

娘の婚約者への疑問

横浜市中区にお住まいの佐藤さん(仮名、50代男性)から、娘の婚約者について調査してほしいという依頼がありました。佐藤さんの娘・美咲さん(仮名、32歳)は都内の大手商社で営業職として働く女性で、半年ほど前から交際している田中健一さん(仮名、43歳)との結婚を控えていました。

田中さんは初回の顔合わせでは誠実そうな印象を与え、礼儀正しく、娘思いの優しい男性として紹介されました。都内の不動産会社で営業をしており、「役員昇格も検討されている」と説明されていました。

父親が感じた違和感

しかし、佐藤さんは何度か田中さんと話をする中で、いくつかの違和感を覚えるようになったといいます。

「最初は『不動産会社の営業』という話だったのに、別の機会では『投資でも収入を得ている』『コンサルティングもやっている』と話が広がっていきました。どれが本当なのか、詳しく聞いても曖昧な返答ばかりでした」

交際が始まって数ヶ月が経った頃から、佐藤さんは田中さんの話に矛盾を感じるようになりました。平日の昼間に連絡しても「会議中」として出られないことが頻繁にあったり、家族の話題になると極端に口数が少なくなったりと、不自然な点が重なっていました。

「娘は仕事が忙しくて、そこまで深く疑うような余裕がないようです。でも親として、このまま結婚に進んで良いのか心配になりました」

佐藤さんの懸念を受けて、当事務所では田中さんの経歴と現在の生活実態について詳細な調査を実施することになりました。

お問い合わせ

お電話での問い合わせの他、LINE・メールでもお気軽にご相談ください。

調査計画の策定

調査方針の決定

佐藤さんからの詳細な聞き取りを行った結果、以下の調査方針を決定しました。

まず田中さんが主張している勤務先の実態調査、過去の職歴と経歴の確認、居住実態と生活状況の把握、そして経済状況の調査を実施することにしました。調査期間は3週間とし、段階的に情報を収集していく計画を立てました。

第1週:勤務先調査で判明した虚偽

不動産会社の実態調査

田中さんが「営業として働いている」と話していた都内の不動産会社について、まず企業情報の確認から開始しました。登記簿謄本を取得したところ、設立から2年程度の新しい会社で、資本金も300万円と小規模でした。また、田中さんの名前は役員として記載されていましたが、これは営業職の説明と矛盾していました。

実際に会社の所在地を訪問したところ、港区の雑居ビルの一室にある、デスク3台程度の小さなオフィスでした。看板も簡素なもので、大手不動産会社のような規模ではないことが一目で分かりました。

勤務実態の確認

平日3日間にわたって、朝8時から夕方6時まで会社周辺で張り込み調査を実施しました。その結果、田中さんが出社する様子は一度も確認できませんでした。一方で、他の従業員らしき人物2名は毎日定時に出勤していることが確認されました。

会社に電話で「田中さんはいらっしゃいますか」と確認したところ、「田中は基本的に外回りが多く、オフィスにはあまりいません」という回答でした。しかし、3日間の張り込みでも外回りから帰社する様子は見られませんでした。

雇用形態の真実

同じビルの清掃業者への聞き込みで、興味深い情報が得られました。清掃業者によると、「田中さんは月に数回顔を出す程度で、普段はほとんど来ていない」とのことでした。

この時点で、田中さんの「不動産会社役員として安定した収入を得ている」という説明に重大な疑問が生じました。

第2週:過去の経歴調査で発覚した問題

会社設立と倒産の履歴

田中さんの過去の経歴について、商業登記を基に調査を進めたところ、重大な事実が判明しました。田中さんが代表を務めた会社が過去に2社あり、いずれも現在は存在していないことがわかりました。

1社目は5年前に設立した雑貨輸入販売の会社で、設立から2年後に廃業。2社目は3年前に設立したイベント企画会社で、設立から1年半後に廃業していました。現在の不動産会社は3社目ということになります。

元関係者からの証言

商業登記に記載されていた元役員の一人が、現在は別の会社を経営しており、その方への聞き取り調査を行いました。

「田中さんは最初はやる気があったのですが、資金管理がずさんで、だんだん会社に来なくなりました。最後の方は連絡も取れなくて、結局私が後始末をする羽目になりました」

この証言から、田中さんの事業運営能力に問題があることが判明しました。

投資話の実態

田中さんが美咲さんに話していた「投資による収入」についても調査しましたが、具体的な投資先や投資実績を示す証拠は見つかりませんでした。

第3週:居住実態と生活状況の調査

住居の実態調査

田中さんは美咲さんに「都内のマンションに住んでいる」と話していましたが、現在の不動産会社の関係者への聞き込みにより、実際の住所は横浜市南区の築古木造アパートであることが判明しました。家賃は月6万円程度の2DKで、決して高級マンションとは言えない物件でした。

平日の行動パターン

1週間にわたってアパート周辺での調査を実施したところ、田中さんは平日の昼間もほぼ自宅に滞在していることが確認されました。朝10時頃にコンビニに買い物に出かけ、午後はパチンコ店で過ごすという日が多く、定職に就いている人の行動パターンではありませんでした。

不動産会社への確認でも、田中さんの出勤は週に2〜3回程度で、それも午後からが多いという回答でした。「営業」という説明とは大きく異なる実態でした。

近隣住民への聞き込み

アパートの管理業者への聞き込みで、田中さんの生活実態についてさらに情報を得ることができました。

「田中さんは2年ほど前に入居されましたが、家賃の支払いが遅れることがよくあります。昼間もよく在宅されているようで、定職に就いているかは疑問です」

経済状況の推測

複数の情報を総合すると、田中さんの実際の経済状況は厳しいものと推測されました。定期的な収入源が確認できず、家賃の支払いも滞りがちという状況から、美咲さんに説明していた「経済的安定」とは程遠い実態であることが明らかになりました。

詳細な身辺調査

家族関係の調査

田中さんが家族の話を避ける理由についても調査しました。田中さんの実家を訪問し、ご両親から話を聞くことができました。

「息子は仕事が長続きせず、家族に心配をかけることが多いです。10年ほど前に離婚もしていて、孫たちとも会えない状況です」

ご両親の証言により、田中さんに離婚歴があることが判明しました。

現在の経済状況

田中さんの現在の経済状況について、複数の角度から調査しました。アパート周辺での観察により、田中さんが頻繁にキャッシングATMを利用している様子が確認されました。

また、美咲さんから聞いた話として、「最初の頃はデート代を支払ってくれていたが、最近は『カードの調子が悪い』『現金を忘れた』などの理由で私が支払うことが増えた」という状況があることがわかりました。

不動産会社での収入についても、「基本給はなく、完全歩合制で契約が取れた時のみ収入がある」という状況で、安定した収入は見込めない状態でした。

調査結果の報告と婚約解消

調査結果の総括

3週間の調査を通じて得られた情報を総合すると、田中さんが美咲さんと佐藤さんに話していた内容は、ほぼ全てが虚偽または誇張されたものでした。

実際の田中さんは、定職を持たず、過去に複数の事業で失敗し、現在は経済的に困窮している状況でした。「都内の不動産会社役員」「投資による安定収入」「都内マンション居住」といった話は全て事実と異なっていました。

依頼者への報告

詳細な調査報告書を作成し、佐藤さんに報告を行いました。報告書には、3週間にわたる調査記録、撮影した写真、公的記録の写し、関係者からの証言記録などが含まれていました。

佐藤さんは報告を受けて、「やはり父親の直感は間違っていなかった。調査をお願いして本当に良かった」と語られました。

「娘にとっては辛い現実ですが、結婚してから発覚していたら、もっと大変なことになっていました」

美咲さんへの説明と婚約解消

佐藤さんは調査結果を美咲さんに慎重に伝えました。最初は信じられない様子でしたが、具体的な証拠を示されると、徐々に現実を受け入れるようになったそうです。

「最近、デートの支払いで『カードが使えない』ということが増えていました。今思えば、すべて辻褄が合います」

美咲さんは田中さんと直接話し合い、調査で判明した事実について確認しました。田中さんは最初は否定していましたが、具体的な証拠を示されると、最終的に虚偽の説明をしていたことを認めたそうです。

「厳しい状況だが、結婚を機に立て直すつもりだった」と弁明していましたが、美咲さんは信頼関係の根本的な破綻を理由に、婚約の解消を決断しました。

依頼者のその後と所感

その後の状況

婚約解消から1か月後、佐藤さんから近況報告をいただきました。美咲さんは最初はショックを受けていたものの、時間の経過とともに「結婚前に真実を知ることができて良かった」と前向きに考えるようになったそうです。

「娘は『今度は父の意見ももっと聞くようにする』と言っています。今回の件で、家族の絆も深まったような気がします」

現代の結婚詐欺の特徴

この事例を通じて感じるのは、現代の経歴詐称の巧妙さです。田中さんのケースでは、一つ一つの嘘に一定の整合性を持たせており、短期間の交際では見破ることが困難でした。

特に「投資」「コンサルティング」といった、実態の確認が困難な職業を装う手法は現代的です。これらの職業は収入の不安定さや勤務時間の不規則さを説明しやすく、詐称に利用されやすいのが現実です。

まとめ

今回の調査では、表面的には成功した実業家に見えた男性の裏に隠された深刻な問題を発見することができました。虚偽の経歴、不安定な経済状況、過去のトラブル歴など、結婚生活に重大な影響を与える可能性のある事実が次々と明らかになりました。

結婚前にこれらの事実が判明したことで、美咲さんと佐藤さんご家族は大きな被害を回避することができました。父親の直感と適切なタイミングでの調査依頼が、家族の将来を守る結果となったのです。

現代社会では、SNSやマッチングアプリでの出会いが一般化し、相手の背景を詳細に知る機会が減っています。だからこそ、結婚という人生の重要な決断の前に、相手の真実を確認することの価値は高まっていると考えます。

小さな違和感を感じた時は、それを見過ごさずに専門家に相談することをお勧めします。家族や友人からの意見も大切にしてください。第三者の視点から見て違和感を感じる点があれば、それは重要なサインかもしれません。

今回のような結婚詐欺や経歴詐称の被害を防ぐためにも、結婚調査の重要性を多くの人に知ってもらいたいと思います。

※本事例は実際の調査案件を基にしていますが、プライバシー保護の観点から、関係者の属性や依頼内容について一部変更を加えています。

▶ 横浜で結婚調査をご検討の方はこちら(ご相談・お見積もりは無料です)

お問い合わせ

24時間・年中無休で無料相談・無料見積もりを承っております。