深夜まで残業を続ける社員の意外な事情とは?【横浜の素行調査事例】

私たちの事務所に相談に来られたのは、横浜市港北区で小規模な製造業を営む56歳の男性経営者Eさんでした。新横浜駅からバスでいらした彼の表情には、困惑と心配が入り混じっていました。

「社員の一人が毎晩遅くまで残業をしていて、どうも様子がおかしいんです。電気代も異常に高くなっていますし、朝一番に出社すると、誰かがいたような形跡があるんです」

Eさんの会社は従業員8名の小さな下請け企業で、現在は案件も安定しており、深夜まで残業を要するような繁忙期でもないとのことでした。それにも関わらず、ある若手社員だけが毎晩遅くまで会社にいる痕跡があり、さらに朝来てみると机の配置が微妙に変わっていたり、給湯室に使用済みの食器があったりと、不可解な現象が続いているというのです。

依頼の背景:模範社員の変化

その社員は20代後半の男性で、入社から3年が経過していました。Eさんによると、まじめで几帳面な性格で、朝は誰よりも早く出社し、掃除や雑務を率先して行う姿勢が評価されていたそうです。上司や同僚からの信頼も厚く、むしろ模範的な存在だったといいます。

「これまでは本当に優秀な社員でした。だからこそ、急に残業を繰り返すようになったことが気になって仕方ないんです。それに、最近は朝の様子も変で、まるで会社で夜を過ごしたかのような雰囲気があるんです」

Eさんが理由を尋ねたところ、「営業先に提出する資料を作成していて、少し手こずっている」との説明があったものの、特に新規の受注もない状況で、資料の提出期限も迫っているわけではありませんでした。さらに、直接本人に確認しても曖昧な返答しか得られず、どうにも腑に落ちない様子でした。

「まずは直接話し合いをしましたが、はっきりとした理由を教えてくれません。会社の機密情報や金庫への不正アクセスなど、もっと深刻な問題がないか心配で」

「努力家だから無理をしているのか、それとも何か別の事情があるのか。体調を崩してからでは遅いし、会社としても何らかの対応が必要かもしれません」

調査計画の策定

Eさんからの依頼を受けて、私たちは調査計画を立てました。今回の調査目的は、問題の社員の行動パターンを把握し、深夜残業の真の理由を明らかにすることです。

調査期間は2週間とし、退勤後から翌朝の出勤までの行動を中心に観察することにしました。また、近隣住民や会社周辺の店舗関係者への聞き込みも実施し、より詳細な情報収集を行う計画を立てました。

Eさんから提供された情報は、対象社員の基本的な外見的特徴、使用している車両、通常の勤務時間、そして最近の行動変化についてでした。また、会社の立地や周辺環境、建物の構造についても詳しく聞き取りを行いました。

調査開始:異常な行動パターンの発見

調査初日、私たちは夕方から会社周辺での観察を開始しました。Eさんの話では、他の社員は18時頃には退社するとのことでしたが、問題の社員は21時を過ぎても会社の明かりが点いたままの状況でした。

22時頃、ようやく彼が会社から出てくる様子を確認しました。しかし、向かう先は自宅方面ではありませんでした。まず最寄りのコインランドリーに立ち寄り、洗濯物を投入してから、近隣のコンビニエンスストアで弁当を購入していました。

その後、洗濯が終わるまでの間、綱島街道沿いのファミリーレストランで夕食を取り、約1時間ほど過ごしていました。一人での食事でしたが、特に急いでいる様子もなく、時間を潰しているような印象を受けました。

衝撃の発見:会社での宿泊

23時30分頃、彼はコインランドリーから洗濯物を回収し、再び会社に戻ってきました。これは明らかに異常な行動パターンでした。通常であれば、この時間に職場に戻る理由はありません。

会社の建物は一階が駐車場で二階がオフィスという構造で、公道から二階の窓の明かりの有無が確認できる立地でした。深夜になっても微かに明かりが見えており、何らかの活動が続いていることが推測されました。

翌朝6時頃、彼は会社から出てきて近くの銭湯に向かいました。約1時間後に戻ってくると、通常通り8時頃から勤務を開始していました。この時点で、彼が会社に宿泊している可能性が極めて高くなりました。

継続調査と聞き込み調査

その後数日間も同様のパターンが確認されました。退社後にコインランドリー、近隣での夕食、そして深夜に会社へ戻るという行動が繰り返されていました。朝は銭湯で身支度を整えてから出勤という生活パターンも一致していました。

並行して、私たちは近隣での聞き込みを実施しました。コインランドリーでの観察では、毎日同じ時間帯に利用している様子が確認されました。また、ファミリーレストランでの様子も、いつも一人で長時間過ごしている状況が観察されました。

銭湯についても同様に、毎朝同じ時間に利用するパターンが確認できました。

住居状況の調査

彼の住居状況についても調査を行いました。近隣住民への聞き込みでは、「引っ越し業者のトラックが来ていた」「最近見かけなくなった」という証言が得られました。

複数の証言から、最近退去したことが確認できました。現在は新しい住居を探している状況のようでした。

経済状況の推測

彼の経済状況についても可能な範囲で観察しました。コンビニでの買い物は必要最低限の食品のみで、ファミリーレストランでも最も安価なメニューを選択していました。銭湯の利用や洗濯代など、最低限の生活費以外の支出は確認されませんでした。

また、平日の昼食時には会社近くの定食屋を利用しており、同僚との付き合いも通常通り行っていることが確認できました。表面上は何も変わらない様子を装っているようでした。

これらの行動パターンから、彼が経済的に困窮している可能性が高いと推測されました。

会社での生活実態

数日間の観察により、彼が実質的に会社を住居として使用していることが確実となりました。深夜に会社に戻った後、翌朝まで建物内にとどまっていることが確認されました。

朝の身支度については、銭湯に向かう前に身なりを整えている様子が確認でき、その後銭湯で入浴とひげ剃りを済ませるというパターンが定着していました。着替えについても、何らかの形で会社内に私物を保管している可能性が推測されました。

業務時間中の行動に特に変化はなく、同僚との関係も良好で、業務上の問題は一切確認されませんでした。むしろ、早朝から掃除や雑務を行っており、これまで以上に会社に貢献している様子も見られました。

調査報告:複雑な事情の発覚

2週間の調査を終え、私たちはEさんに詳細な報告を行いました。動画記録約4時間分とそこから抜き出した重要場面の静止画、そして詳細な行動記録、聞き込み調査の結果をもとに、包括的な状況分析をまとめました。

報告書には、彼が住居を失い、やむを得ず会社に宿泊していること、その背景として経済的困窮があること、しかし業務に支障をきたしたり、会社に損害を与えたりしている形跡は一切ないことが記載されています。

「不審な行動の理由は分かりましたが、まさかこんな事情があったとは思いませんでした。正直、複雑な気持ちです」とEさんは話されていました。

経営者の対応:事実確認と対話

調査結果を受けたEさんは、直接本人に事情を確認することを決断されました。後日、その社員を個別に呼び出し、状況について話し合いの場を設けたそうです。

「最初は何も問題ないと言い張っていましたが、具体的な証拠を示すと、観念したように事実を認めました」

彼によると、カードローンの返済が重なり、家賃を滞納してしまったとのことでした。当初はビジネスホテルに数日泊まったものの、金銭的に続かず、やむを得ず会社で過ごすようになったそうです。罪悪感はあったが、他に選択肢がなく、一時的にしのぐつもりが長引いてしまったと話していたそうです。

「会社には迷惑をかけたくなかったので、業務は今まで以上にしっかりやろうと思っていました。でも、こんな形で迷惑をかけてしまって申し訳ありません」と深く謝罪していたとのことです。

会社の対応:支援体制の構築

Eさんは「気づいてあげられなかったことも、私の責任です」と話しつつも、今後の対応策を慎重に検討されました。

まず、緊急的な住居確保のため、会社が連帯保証人となって彼がアパートを借りられるよう支援することになりました。また、敷金・礼金については会社からの無利子貸付制度を利用し、給与から少しずつ返済していく形を取ることで合意したそうです。

カードローンについても、本人から相談があれば会社として何らかの支援を検討するという方向で話が進みました。

会社の管理体制についても見直しを行い、入退室の管理を強化する一方で、従業員の生活相談窓口を設置することも決定されました。

その後の展開:問題の解決

調査終了から約3週間後、Eさんから連絡をいただきました。問題の社員は新しいアパートでの生活を開始し、経済状況も徐々に改善しているそうです。

「彼も本当に反省していますし、今まで以上に仕事に打ち込んでいます。今回のことをきっかけに、会社としても従業員の生活面にもっと気を配るようになりました」とEさんは話されていました。

業務面でも、彼は以前にも増して積極的に取り組むようになり、同僚との関係も良好を保っているとのことです。

職場環境の改善:予期しない効果

今回の件をきっかけに、Eさんの会社では従業員の福利厚生制度の見直しが行われました。定期的な個人面談の実施、住宅手当の増額、緊急時の貸付制度など、働きやすい環境づくりに取り組んでいるとのことです。

また、社員同士のコミュニケーションも活発になり、何か困ったことがあれば気軽に相談できる雰囲気が生まれたそうです。これは予期しない副次的効果でした。

探偵としての所感

この事例を通じて、素行調査の重要性を改めて実感しました。表面的な行動だけでは判断できない、深刻な事情が隠されていることがあります。

今回は悪意ある行動ではなく、一人の社員が抱える経済的な困窮という問題でした。調査により事実を把握することで、適切な支援策を講じることができ、結果として職場環境の改善にもつながりました。

企業の従業員調査においては、単に問題行動を暴くだけでなく、その背景にある事情を理解し、建設的な解決策を見つけることが重要だと考えています。

結論:理解と支援の重要性

今回のケースでは、表面的な「問題行動」の背後にある深刻な事情を理解することで、懲罰ではなく支援による解決策を見つけることができました。

企業経営者の方々には、従業員の異常な行動に気づいた際、まず事実を正確に把握し、その背景を理解した上で適切な対応を検討することの重要性をお伝えしたいと思います。

今回の調査期間は2週間で、調査対象は20代後半の男性社員でした。主な調査内容は行動パターンの把握、聞き込み調査、住居・経済状況の確認で、結果として住居喪失による会社での宿泊が判明し、最終的に会社の支援により問題が解決され、職場環境の改善にもつながりました。

なお、本事例は実際の調査案件を基にしていますが、プライバシー保護の観点から、関係者の属性や詳細な内容については一部変更を加えています。

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